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ICI ART

ICI ART 第10回円空大賞展
ロボットとの共創による木工彫刻

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フランスの彫刻作品を
日本の木造ロボットで実体化
芸術とデジタルファブリケーションの共創が美術館へ

ICI総合センターにて開発中の大規模木造用ロボット加工機を用いて、日比野克彦氏(東京藝術大学 美術学部長)監修のもと、
Tara Océan財団※1が所有し運営する科学探査スクーナー船タラ号に、「タラ号太平洋プロジェクト」の際、
乗船したアーティストであるニコラ・フロック氏の作品「珪藻」「ディノフラゲラート」の2点を制作し、
岐阜県美術館で開催されている円空大賞展に出展しました。
フロック氏は数ミクロンの生物のレーザースキャンから、これらの光合成生物の彫刻は石や木材の中にあり、
彫刻がそれらの生物の構造や物質の形成プロセスを想起させると考えています。
微小な生物を拡大させデジタルで粉砕したこれらの彫刻は、
生物の構造に対応する材料(石灰岩、シリカ、またはセルロースなど)から機械加工されます。
これらの作品は、フロック氏の“Watercolors”作品群 の一環です。それは、これらの植物プランクトンが、
海洋生物の食物連鎖の根幹をなし、二酸化炭素を吸収し、酸素を生成し、海洋の大部分の色を決定付けているからです。
フロック氏は、共焦点レーザー走査顕微鏡から得られる3Dデータを、S. Colin氏、
Plancton Planet(https://planktonplanet.org/)、CNRS Roscoff(http://www.sb-roscoff.fr/en)の協力・提供により制作。
珪藻ならではの表面を覆う微細な多くの穴など、人の手でも加工が難しい彫刻を、
ICI総合センターではロボットのみで忠実に実体化しました。
世界でも稀と思われる芸術とデジタルファブリケーション※2の共創を一早く実現いたしました。
※2デジタルファブリケーション
コンピュータと接続されたデジタル工作機械によって、デジタルデータをさまざまな素材から切り出し、成形する技術のこと。

フランスの彫刻作品を日本の木造ロボットで実体化 芸術とデジタルファブリケーション の共創が美術館へ

Watercolors, CO2->O2, 珪藻

Watercolors, CO2->O2, 珪藻 90ミクロンの中心類珪藻の拡大物。(日本では、Tara Océan財団の円空大賞受賞記念に、円空大賞展に出展するために、特別版として木工で製作。本来はベルギーのエノー地方のブルーストーンなど、石で製作するものである。)共焦点レーザー走査顕微鏡によって得られた3Dスキャンから木材のデジタルファブリケーションによって彫刻。

Watercolors, CO2->O2, ディノフラゲラート

Watercolors, CO2->O2, ディノフラゲラート 渦鞭毛藻、セラチウムの拡大物。共焦点レーザー走査顕微鏡によって得られた3Dスキャンから木材のデジタルファブリケーションによって彫刻。
※3Dデータ提供協力:S. Colin、Plankton Planet / CNRS Roscoff

Nicolas Floc’h ニコラ・フロック (c) Noelie Pansiot
/ Tara Ocean Foundation
Artist
Nicolas Floc’h ニコラ・フロック

1970年 フランス・レンヌ生まれ、パリ在住。写真家兼ビジュアルアーティスト。インスタレーション作品、写真、彫刻作品を中心に活動している。ブラジル、オランダ、日本、アメリカ、ベルギー、トルコ、チリ、イギリスなど世界中で作品の展示を行っている。ニコラ・フロックは、2016年から2018年まで2年半行われた「タラ号太平洋プロジェクト」の途中、2017年3月から約5週間、東京から基隆(台湾)まで黒潮の流れに沿って、タラ号に乗船。その後タラ号乗船によって製作された作品を、瀬戸内国際芸術祭2019や、第10回円空大賞展でも発表。(Tara Océan財団 公式サイトより一部抜粋)

※1 Tara Océan (タラ オセアン)財団(https://oceans.taraexpeditions.org/ フランスのファッションデザイナー アニエスベーが共同創設し、その後、15年以上に渡りメインスポンサーとして支援し続けているTara Océan財団は、2003年より世界中の科学者や研究所と協力し、海洋科学探査船タラ号で世界中の海を航海し、気候変動や環境破壊が海洋にもたらす影響を研究しています。Tara Océan財団のミッションである、科学「探査」の結果を多くの人に「共有」するために、タラ号にはアーティストも乗船し、科学者が調べて解明して発信できることとは別に、アーティストでないと感じることができない海の状態、様子など、実際に海で体験したことを作品にして発表します。この最先端の科学とアートの融合による活動が、「日本各地を旅し、人々の幸せを願いながら、説法だけでなく仏像を制作することを通して、願いを発信し続けた円空の生き方に通じている。」と評価され、第10回円空大賞の受賞につながりました。

匠の技を再現

今回の2作品は大規模木造用ロボット加工機を使用して製作されました。
このロボット加工機は前田建設工業株式会社と国立大学法人千葉大学の共同で、
BIM(Building Information Modeling:建築3次元モデル)のデータから大規模木造建築に使用するCLT材などの構造材を
自動加工することを目的に開発されました。
ロボット加工機は、従来加工の他、3次元データを用いた彫塑的な加工を行うことも可能で、これにより伝統建築における
意匠的な装飾を施した材料などの自動加工についても、BIM三次元データから一気通貫で加工が可能です。
また、多関節型ロボットを用いた材料の全面同時加工は、精密加工や曲線加工が可能なため、細密な木質内装加工、
複雑な型枠の制作、家具什器や芸術作品にも適用可能です。
ICIラボ内のネスト棟では、本加工機でカットした材料を構造材として使用しました。
さらに精密彫刻の性能実証を目的とした恐竜骨格標本の複製製作を
福井県立恐竜博物館・福井県立大学恐竜学研究所監修の下で行い、現在ネスト棟で公開中です。
従来の木造加工機が抱えていた問題を解消し、創造性を重視した国産の加工機で、
職人の技を使える「人工技能」の実現を目指します。

「Watercolors, CO2->O2, 珪藻」制作Time lapse

「Watercolors, CO2->O2, ディノフラゲラート」制作Time lapse

製作過程

3Dデータ取得
13Dデータ取得

3Dスキャナー等により作品の
3Dデータを取得します。

ロボットモーションデータの生成
2ロボットモーションデータの生成

3Dデータからロボットの
動作指令を作成し、ロボットに送信します。

【切削】粗削り①
3【切削】粗削り①

太いツール(切削用刃物)を用い
作品の大まかな形状を削り出します。

【切削】粗削り②
4【切削】粗削り②

中間のツールを用い、
作品の凹凸を削り出します。

3Dデータ取得
5【切削】仕上げ

細いツールを用い、4では削りきれない
細く深い部分の凹凸を削り出します。

切削終了
6切削終了

切削が終了しワーク(加工する木材)から
作品を切断します。

ロボットで忠実に再現するというのは
彫刻家にとっても新たな世界が広がる
東京藝術大学 美術学部長 日比野 克彦氏インタビュー

-今回の作品をICIにあるロボット(多軸加工機)で作ることになった経緯を教えて下さい。

日比野 克彦氏:今回の円空大賞展に科学探査スクーナー船タラ号乗船アーティストであるニコラ・フロック氏(以下、ニコラ)の作品を出すことになりました。その際、ニコラから「フランスから石でできた現物を輸送するのが難しいため、日本に3Dデータから作品を造形できる機械はありますか。」と聞かれました。私も他の芸大の先生に聞いたり、調べたりしましたが、見つからなくて・・・その時に偶然、前田建設が自由形状に3D加工できる多軸加工機を持っていると聞いて、お願いすることにしました。

-今回の作品の出来栄えはどうですか。

日比野 克彦氏:素晴らしい出来栄えだと思います。当初、ニコラは石でないとコンセプト的に違うと言っていたのですが、私は西洋の文化である石に対して、日本で生まれた作品という意味では日本の文化である木でつくるという考え方もあるのではないかと提案しました。それで一度見てみようということで製作に取り掛かりました。芸術家の目の付け所をデータからロボットで忠実に再現するというのは、ニコラに限らず彫刻家にとっても新たな世界が広がると思います。

-今後、ロボットを使用して製作したいものはありますか。

日比野 克彦氏:そうですね。昔は彫刻にはノミが必要、絵を描くには筆が必要、音楽をやるにはピアノが弾けなければならず、道具が使える使えないの制約でモノができるできないというのが常識でした。でも、今はパソコン1台があれば音楽や映画など何でもつくれる時代になってきています。今回のように、作品をデータ化できれば特別な技術を伴わなくてもそれを形にできます。そのうち、そのデータ化さえも省かれ、イメージすれば形にできるような時代はすぐに来ると思います。そうすれば、例えば肢体不自由の方の作品も作ることができて、アートの枠が広がっていくと思います。

日比野 克彦

東京藝術大学 美術学部長

日比野 克彦

Katsuhiko Hibino

経歴
1958年 岐阜市生まれ。1982年 東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。1984年 東京藝術大学大学院美術研究科修了。国内外で個展・グループ展を多数開催し、各地で一般参加者とその地域の特性や関係性、人々の違いを生かしたアートプロジェクトやワークショップを数多く行っている。現在、岐阜県美術館長。東京藝術大学美術学部長、先端芸術表現科教授。

第10回円空大賞展
-希求、未来への創造-

開催期間:2020年1月30日(木)〜3月8日(日)
開館時間:10:00〜18:00
夜間開館日:第3金曜日(2月21日)は20:00まで開館(入館は19:30まで)
観覧料:一般800円(700円)、大学生600 円(500円)高校生以下無料
*( )内は20名以上の団体料金
休館日:月曜日(祝・休日の場合は翌平日)
会場:岐阜県美術館 展示室3、多目的ホール

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